駒苫田中「悔いありません」/夏の甲子園

- 笑顔で記念写真に納まる駒大苫小牧・田中(前列中央左)ら両校ナイン
<全国高校野球選手権:早実4-3駒大苫小牧=再試合>◇21日◇決勝・引き分け再試合
全身全霊のフルスイングだった。1点差に詰め寄った9回表2死走者なし。打席の駒苫・田中は早実のエース斎藤に「男と男」「力と力」の勝負を挑んだ。ファウルで2球粘った7球目。144キロの直球に、銀色のバットが空を切った。
聖地に響くサイレンが最後の夏の終わりを告げた。「自分のスイングができました。見逃しじゃなく、空振り三振で悔いはありません」。マウンド上でNO・1ポーズを掲げる早実ナインに背を向け、ゆっくりとダッグアウトに向かい、静かにバットを置いた。最後まで涙は見せなかった。
1回裏2死一、二塁のピンチに先発菊地翔太(2年)からマウンドを引き継いだ。2回、6回、7回と1点ずつ失った。「相手の方が一枚上でした」。最後の夏でNO・1投手の座を斎藤に譲った。
この日の最速は自己記録に7キロ及ばない143キロ。理由は明確だった。大阪入り直前に発熱で体調を崩し、開幕前は腸炎による下痢に苦しんだ。おかゆしか口にできず、初戦で脱水症状に陥り、バランスを崩した。大会中にフォーム修正を余儀なくされた。「終わったこと。言い訳にしたくありません」。怪物らしさを取り戻せないまま、大会を終えた。田中に黒星はつかなかったが、チームの公式戦連勝は「48」、夏の甲子園連勝も「14」でストップ。73年ぶり夏V3の偉業にあと1歩、届かなかった。
だが田中の夢はまだ終わらない。全日本選抜チームのメンバーに選出され、日米親善試合で同世代の大リーガー候補たちと対戦する。そして今秋の高校生ドラフトで地元日本ハム、巨人など複数球団の「1巡目指名」が予想される。進路を問われ「上でやりたいと思います」ときっぱり。「プロですか」の問いに「そうです」と即答した。
閉会式終了後だった。2日がかりの死闘を終えた駒大苫小牧ナインは静粛を取り戻した甲子園で「感謝」の胴上げを行った。香田監督に続き、186センチ、83キロの強固な体が計3度、聖地の空を舞った。両肩にテーピングを施し、今大会6試合計52回2/3を投げ、54三振を奪った。「たくさんの人たちの応援が力になりました。感謝の気持ちでいっぱいです」。田中は春夏の甲子園通算で計12試合8勝0敗の成績を残した。記録も、記憶も残る、怪物右腕だった。【白船誠日】
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